認知症の症状は、人によってさまざまです。
認知症の種類や、元来の性格によるところもありますが、もう一つ大きな要素があります。
その要素とは…
二つに分けられる症状
認知症の症状は大きく二つに分けられます。それは『中核症状』と『行動・心理症状』です。
中核症状とは
脳の働きが低下したり、脳の細胞が死んでしまったりすることによって、その部分が担っていた役割が失われることで現れる症状のことをいいます。
・『ご飯を食べたことを忘れる』『同じ話を繰り返す』などのもの忘れ
・日時や場所、人物などが分からなくなる
・料理がうまく作れなくなるなど、段取りよい行動ができなくなる
・言葉が出てこなかったり、会話のつじつまが合わなくなったりする など
障害を受けた脳の場所によって症状は異なりますが、これらは程度の差はあれ、認知症になると誰にでも現れる症状です。
行動・心理症状とは
中核症状によって引き起こされる二次的な症状です。
・徘徊したり、自宅にいるのに「家に帰る」と訴えたりする
・気分が沈み、何事にも意欲がなくなる
・怒りっぽくなったり、感情が抑えられなくなったりする
・幻聴や幻覚
・「ものを盗られた」などの妄想を話す など
これらは認知症になったら必ず現れるという症状ではありません。
行動・心理症状が発現したりしなかったりする原因
心理的な不安やストレスなどが主な原因になります。
認知症になっても、かなり末期になるまで感情は侵されません。
同じ話を繰り返してしまった時に、怒られたら気分が落ち込んでしまいますよね。これが原因となって抑うつ状態や意欲の低下を引き起こすことがあります。無視をされたら、不快なので自分が心地よく過ごせる場所に移りたくなりますよね。これが、周囲からは徘徊だとみなされてしまうこともあります。
誰だって不安やストレスを感じたら、それを解消したくなりますよね。
認知症でその時の出来事は忘れてしまっても、その時感じた感情は残ります。
なので、不安やストレスが大きいほど、行動・心理症状も発現しやすくなったり、悪化したりするのです。
つまり、認知症の症状が人によってさまざまである要因は、その人が過ごしている環境や周囲の人の接し方にあるのです。
認知症になっても『ここなら安心して過ごせる』『この人は自分を受け入れてくれている』と感じることができれば、穏やかに生活していくことも可能です。
『2025年には高齢者の5人に1人が認知症』といわれています。他人ごとではない認知症を、理解を深めることで、社会全体で安心して過ごせる環境を作っていけたらいいですよね。
介護老人保健施設で介護福祉士として長く働き、ケアマネジャーを経て、地域密着型通所介護の所長を務めていました。
高齢者やそのご家族が、いきいきと健康的に過ごせるような生活情報をお伝えしてまいります。