家族や周囲の高齢者に「最近何をするのも億劫なようだ」「物忘れが激しくなってきた」というようなことがあった場合「もしかして認知症かな?」と真っ先に思いますよね。
でも、認知症とはちょっと違う『仮性認知症』と『せん妄』という症状があるのをご存じですか?
仮性認知症
仮性認知症とは
うつ病によって、判断力や記憶力などが低下し認知症に似た状態になることです。
うつ病とは、精神的・身体的ストレスなどが原因となり脳がうまく働かなくなっている状態です。高齢になると、加齢による身体機能の低下、退職や子の自立による社会的役割の変化、家族や友人の死、自身が大きな病にかかるなどのショックが要因となり、うつ病になることが多くあります。
認知症との違い
・認知症はいつの間にか発症して徐々に進行していくが、仮性認知症は突然発症する。
・認知症は身体の不調を自ら訴えることは少ないが、仮性認知症は不眠や倦怠感などの身体の不調を自ら訴えることが多い。
・認知症では物忘れを否定することが多いが、仮性認知症では物忘れについての自覚がある。
・認知症では元気に笑い大きい声で話すことも多いが、仮性認知症ではひきこもったり悲観的になったりする。
・認知症では食欲に変化はなく過食になることもあるが、仮性認知症は食欲が減ることが多い。
・認知症では夕方に落ち着かなくなることがあるが、仮性認知症では午前中に症状が出ることが多い。
せん妄
せん妄とは
一時的に意識障害や認知機能の低下などが起こる精神状態のことです。
元々持っている脳梗塞などの病気が主な要因ですが、高熱や脱水・薬の過剰摂取が原因となることもあります。
年月日や今いる場所が分からなくなる見当識障害や、急激な感情の変化などの症状があります。
入院や手術を機に、突然暴言を吐くようになったり、幻覚が見えるようになったりする高齢者が時折いらっしゃいますが、それもせん妄の状態です。
認知症との違い
・せん妄は発症期間が数時間~数日間と一時的。
・急にせん妄状態になり、また急に正常な精神状態に戻ることがある。
・認知症は意識がはっきりしているが、せん妄は意識の低下が見られる。
・夜間に症状が出ることが多い(夜間せん妄)。
改善する可能性があります!
仮性認知症・せん妄と認知症の大きな違いは、原因となっている疾患の治療などを行うことで症状が改善するということです。
しかしこれらの違いを判断することはとても難しいことです。
気になる症状があった時は、かかりつけ医や専門医に相談してくださいね。
介護老人保健施設で介護福祉士として長く働き、ケアマネジャーを経て、地域密着型通所介護の所長を務めていました。
高齢者やそのご家族が、いきいきと健康的に過ごせるような生活情報をお伝えしてまいります。