『どこに行こうとしているの?~徘徊の理由~』では「認知症による徘徊は目的もなく歩き回っているのではなく、本人なりの理由がきちんとあるんですよ」というご説明をさせていただきました。
では、家族に徘徊やその兆候がみられた時はどのように接したらよいのでしょうか。
一緒にひもといてみませんか?
まずは話を聞いてみる、そして○○しない
まずは話を聞いてみましょう。「どこに行こうとしているのか」「何をしようとしているのか」その理由はさまざまです。
話を聞く時のポイントは『否定しない、怒らない』ということです。これがなかなか難しくもあり、とても大切なことです。
例えば「買い物に行かなきゃならない」という答えが返ってきたら「買い物なんて行く必要ないでしょ」とは言わずに、「買い物に行かなきゃならないと思っているのね。でも今日の夕食は私が作るから何が出てくるか楽しみにしていてね」と声掛けしてみるのはいかがでしょか。
声かけ一つで、気持ちが落ち着くこともあるんですよ。
○○を持って生活してもらう
話を聞いてみて「家に帰りたい」「仕事に行かなければならない」という答えが返ってきた時は、不安の表現であったり、自己認識が若返っていたりしているのかもしれません。
そんな時は、役割を果たしてもらうというのも一つの方法です。お皿を拭く、洗濯物を畳む、新聞紙を束ねる、庭の手入れをするなど、無理のない範囲でできることをやってもらいましょう。
日常的に行っていたことは、認知症が進んでも変わらずに行えることが多いものです。
役割を実行することで、手持ち無沙汰が解消されます。さらに「頼りにされている」「自分も必要とされている」と思ってもらえることで不安が解消され、気分が落ち着いてくるかもしれませんよ。
一緒に○○してみる
もし可能であれば、一緒に歩いてみるというのも一つの方法です。外の空気を吸って少し歩くことで気持ちが満たされることもありますし、本人が「少し疲れたかな」というタイミングで声を掛ければスムーズに家に戻ってくれることもあります。
日中に適度に体を動かすことは、身体のリズムを整え、夜間の安眠へもつながりますよ。
理由をたずねても、はっきりとした返答が得られない時もあるでしょう。そんな時は、できるだけ短い文章で話をするように心掛けることと、話の中に出てきたキーワードを復唱してみることで、相手の話を引き出すことができるかもしれません。
まずは「どうしたの?」と聞くところから始めてみるのはいかがでしょうか。
介護老人保健施設で介護福祉士として長く働き、ケアマネジャーを経て、地域密着型通所介護の所長を務めていました。
高齢者やそのご家族が、いきいきと健康的に過ごせるような生活情報をお伝えしてまいります。