『車椅子の使い方~基本編~』では、車椅子の基本的な使い方についてお伝えいたしました。
今回は、車椅子をより安全に使うための発展編です。
スロープを下る時は後ろ向きで
病院や商業施設では、入口付近などで段差があるところはスロープ(坂道)になっているのをよく見かけます。このスロープを下る時は、車椅子も押す人も後ろ向きで下ることをおすすめします。それは座っている人が車椅子から転がり落ちてしまう危険があるからです。
あなたがもし座面が前に傾いている椅子に座ったら、座り直したり、落ちないように手や足に力を入れて踏ん張ったりするのではないでしょうか。でも車椅子に座っている人が必ずしもその動作をできるとは限りません。
車椅子を押す人は、後ろを振り返り危険がないことを確認しながら、ゆっくりとスロープを下っていくといいでしょう。
段差を越える時はティッピングレバーを軽く踏んで
車椅子の後輪の下部内側にはティッピングレバーという部分があります。車椅子を押す時に握るグリップの真下に見える部分です。これを踏むと前輪が浮き上がります。これを利用して段差を越える動作を行います。
段差を上がる時は、段差の直前まで車椅子を寄せる→ティッピングレバーを踏む→浮き上がった前輪を段の上に乗せる→少し前進→後輪が段差手前に来たらグリップをしっかり握って押し上げるという手順で行います。
段差を降りる時は、後ろ向きで段差の直前まで車椅子を寄せる→後輪だけをゆっくり段差の下に降ろす→ティッピングレバーを踏んで前輪を浮かす→前輪が少し浮いた状態のまま後ろに下がる→前輪を降ろすという手順で行います。
10cm程度の段差であればこの方法で段差を越えることができます。
この方法は座っている人も後ろに傾くのでとても恐怖を感じます。必ず「後ろに傾くよ」などと声を掛けながら動作を行いましょう。
それ以上の大きな段差を越える時は、助けを呼んで手伝ってもらうのが安全です。最低でも3人で、1人は後ろでグリップをしっかり握って、残りの2人は車椅子の両側に立ち、ひじ掛けの辺りを持ち上げるのがよいでしょう。
手はひじ掛けを握るか膝の上に
車椅子走行中に手がタイヤに巻き込まれるとけがをする恐れがあります。特に、手にまひのある人はけがをしても気付かないことがあるので注意が必要です。
知っているといつか役に立つかもしれない車椅子の安全な使い方。
ぜひ頭の片隅に入れておいてくださいね。
介護老人保健施設で介護福祉士として長く働き、ケアマネジャーを経て、地域密着型通所介護の所長を務めていました。
高齢者やそのご家族が、いきいきと健康的に過ごせるような生活情報をお伝えしてまいります。